聖書の学び資料
福音の始まり・世界の始まり
ルカによる福音1章、創世記1章
ルカは医者であったこともあり、病人や女性など弱い立場にある人々に視点を当てて福音書を書きました。マリア様からも直接話を聞いていたようで、イエス様の誕生の場面はとても詳しく、マリア様中心に描かれています。ルカは、福音書の中で女性に光を当てて描き、また祈りを大切にしています。そんなルカ福音の始まりはテオフィロという人物へ捧げられています。テオフィロとはどのような人物であったのかは良く分かっていませんが、「神を愛する者」という意味の名前であることは分かっています。大勢の人物にではなく一人の人に、しかも「神を愛する者」に、ルカは福音を宣べているのです。福音とは、神様からの喜びの知らせです。この喜びの知らせは、神を愛する「あなた」に向けられているつもりで、ルカによる福音を読んでいきたいと思います。
まずルカは福音の始まりとして、イエス様の先駆けとしてのヨハネの誕生について語ります。非の打ちどころのないザカリアとエリザベト。唯一の欠点は、子どもがなかったことでした。当時の価値観として、子どもは祝福の印でしたので、子どもがないということは、神様から祝福を受けていない、つまり神様に背いた生き方をしているのだと人々から思われていました。そんなザカリアとエリザベトに子どもができたのです。「主がエリザベトを大いに慈しまれた」のが分かります。生まれて8日目には割礼をさずける儀式があり、その時に初めて赤ちゃんに名前を付けます。ザカリアは天使から言われたとおり、「主は恵み深い」という意味のヨハネという名前を赤ちゃんに付けました。福音の始まりは、恵み深い主(神様)の登場です。旧約の時代は裁きの神が強調されていたのに対し、新約の時代になって恵み深い神様、慈しみ深い神様こそが本当の神様の姿であることを強調するようになります。
しかし、旧約の神様は慈しみ深くないのでしょうか。今回から旧約聖書についても少し詳しく見ることにしました。旧約聖書を読むと、その中にも神様の愛を感じるものはたくさんあります。創世記の一番初めに天地創造の場面が描かれています。神様は無から宇宙を創られました。人間は様々なものを生み出し、創造しますが、必ず、既に存在する物を利用して造り出します。それに対して神様は、何もないところに何かを創造します。無から宇宙を創りあげたのは、神様の技であるとしか考えられません。神様の言葉によって、混沌とした世界に秩序と調和が生み出されていく様子が、聖書の描く「天地創造」です。聖書では、最初に光が誕生しました。そして神様はそれを見て、良しとされます。次に海を造り、それを見て良しとしました。神様は創造した一つ一つのものに満足したのでした。そして最後に、完成した天地を見て「極めて良かった」と、創世記1章を締めくくります。この世界は、神様が最高に満足した最高傑作なのです。神様が、私たちとこの世界を限りなく愛してくださっているのは、この創世記から読み取れます。創世記は古代オリエントの時代に書かれたと考えられています。その時代の思想ですから、進化論が一般的になっている現代の私たちにとって、世界がどのように創られたかという事実を聖書から読み取るのではなく、なぜ神様は世界を創られたのかを見ることが大切です。神様が愛情たっぷりに私たちを創造されたことを感じ取ってください。神様は御自分の意志で、「光あれ」と言葉を発して世界を創りました。神様は、私たちの存在を望んだのです。神様が私たちをどれだけ愛し、私たちの存在をどれだけ望んでいるのかを信じて、生きたいと思います。このように考えたら、神様の創られた人間を大切にする心や、神様の創られた自然や環境を保全する心が生まれてきます。災害地や貧しい国にボランティアに出向くことも、エコに心がけて生活することも、身近な家族や友達を大切にすることも、神様の愛する世界を大切にすることです。自分の近くにいる人も周りの物も、会ったことのない人も世界の裏側の自然も、動物も植物も、私たちはキリスト者として、大切にしなければならないのです。そして、この世界を創られた神様を賛美しましょう。神様は素晴らしいと褒め称えましょう。洗礼者ヨハネが誕生した時、ザカリアが最初に発した言葉は、神様を賛美する言葉でした。今日は、神様の創られたすべてのものを見て賛美する時間にしたいと思います。
